コンビニが繫いだ、特別な旅館|by ライスボウル紳士 No.0005
黄色に赤字で書かれたシールが眩しい。
しかし、新発売というめでたいシールと、
税込み価格より20円引きという嬉しくも切ないシールが、
同じ色の組み合わせというのはどうだろう。
コンビニおにぎりに対して、
そんなことを考える私は疲れているのかもしれないが、
右側の地味な色のシールを見て心が躍った。
トリュフソースと卵黄のペッパーごはんと書かれている。
トリュフ。トリュフ。トリュフ。
言い響きだ。
私は一瞬で記憶の世界に入りこんでいた。
GoToキャンペーンなるものが行われていた昨年、
私は神奈川県内の某温泉街にいた。
久しく外出も旅行もできていなかったため、
少々奮発した和洋折衷の旅館は料理が自慢の宿だった。
地元の野菜や魚、肉が使われた料理は大変美味だった。
でも、一番印象的だったのは、締めに出てきたトリュフご飯だった。
もわっと強めの香りがするご飯を口に含むと、
味の奥に深い上質の土のような味がした。
うまい。うまかった。
これまでに食べたフォアグラご飯の概念を変えるほど、
香りがよく大変心地の良い味だったのだ。
そんな記憶の味、トリュフご飯。
それがふらっと訪れたローソンで、自分の目の前にある。
しかも20円引き。買わないという選択肢はなかった。
コンビニおにぎりを買うのはいつも会社で仕事している途中だ。
このときもそう。
仕事が一段落した合間を狙って、おにぎりを取り出す。
少し粘っこい。鼻を近づけるとあの時と似たような香り。
一口食べる。うん、あの時と似たような味。うまい。
久しぶりの旅館で食べたあのトリュフご飯にかなうはずはないけれど、
オフィスにいることを一瞬でも忘れさせてくれる味わいだった。
ありがとうトリュフ。
いや、メルシーボクートリュフ。
ライスボウル紳士