右手にマウス、左手におにぎり。キーボードはどうする|by ライスボウル紳士 No.0004
すっかり慣れてしまったコロナ禍の生活。
マスクをしないといけない、気軽に出歩けない、というのはこんなに厄介だとは。
だが、少しは良かったことと言えば、在宅のリモートワークが広まったことではないか。
先日私は、JR上野駅の近くを歩いていた。
車の騒音が轟く高速道路脇。
そんなところにおにぎり専門店、江戸の玄むすはあった。
おにぎり店に行くとずっと悩んでしまう私だが、この日はまったく迷いはなかった。
おかか。
理由は自分でもわからないが、その響きに吸い寄せられた。
店員さんがケースからおにぎりを取り出し、
竹の皮と見間違うような包装紙に丁寧に包んでくれた。
さすが看板に江戸と掲げているだけのことはある。
帰宅した私は、リモートワークの傍ら、
おにぎりを食べようと決めていた。
この日もいつものように忙しい。
オンラインで音声を繋ぎ、同僚の声が頻繁に飛び交う。
静かなマンションの一室なのに、会社にいるかのように錯覚してしまう。
慌ただしく時間が過ぎた。
そのうち腹が減ってきた。
右手にマウスを掴んだまま、左手におにぎりを掴んだ。
甘い。
甘めに味付けされたおかかだけでなく、米まで甘い。
なんだこれは。
うまい。甘うまい。うまい。
おにぎり自体が甘いのか、仕事をしながら食べているのか甘く感じるのか。
正直自分では判断できないので、後日おにぎりボーイの意見も聞こうと思う。
まだ三分の一ほど残っている時、パソコンのチャットに書き込みがあった。
返信しないといけない。
そう思うが、右手はマウス、左手はおにぎりが占領している。
キーボードが触れない!!
返信をするためにおにぎりをいったん置くかと一瞬考えたものの、
そんな必要はないことに気づいた。
相手はおにぎりだぞ。ぱくっぱくっと口に押し込んで、左手は自由になった。
少し甘ったるいと感じるようなおにぎりだったが、疲れている体にはこれくらいがいい。
ありがとうおにぎり。
今回はその言葉だけで十分だろう。
ライスボール紳士