梅むすび|むす美|by ライスボール紳士 No.0002
はじめに申し上げておくと、私はおにぎりを店で買うことに抵抗がある人間だった。
いや、今も抵抗があるのが正直なところだ。
食費を抑えるために自炊をすることが多いので、
自分で握れるおにぎりなんか買うのは勿体ない。そう思っていた。
しかし、友人のおにぎりボーイがブログを始めたと私に打ち明けたとき、
大変な衝撃を覚えた。
なぜ、ブログなのか。なぜ、おにぎりなのか。なぜ、いまなのか。
彼は多くを語らなかった。
私は彼のまねをしておにぎりを買ってみるのだった。
食してみると、まあおいしいなというくらいの感想しか出てこなかった。
だが、一息つくと、大変な満足感を覚えた。
好物のラーメンや揚げ物なんかを食べたときには出てこない満足感だ。
これこそ、原点だ。ものを食べることの根源的な感覚だ。
懐かしいあの感覚だ。びびっときた。
そうして、私はおにぎりボーイのブログに投稿するようになった。
そんな私は気がつくと、JR御徒町駅そばにある、むす美という店の前にいた。
すし屋のような上等な店構え。暖簾をくぐると、
プラスチックのカップに丁寧に包まれたおにぎりが並んでいた。
「閉店間際なので、どうぞ買ってやってください」
そんなことを店員の男性が元気に言った。
おにぎり界の基本中の基本、梅むずびを一つ連れ帰った。
ぱかっ。宇宙服のようなプラカップを取る。
ぱくっ。頂点に積まれた梅の部分から頰張る。
うまい。これこれ。
ほぐされた梅の強い味わい、湿った海苔の海を感じさせる風味。
こじゃれてはいるが、これぞ梅むすび。
あんな言葉は言いたくない。ブログ主に気なんか使いたくない。
でも、私はまた自然とつぶやくのだった。
ナイスライスと。
ライスボール紳士